藤原 雅哉, 古在 豊樹, 久保田 智恵利, 高垣 美智子, 酒見 幸助
熱帯農業 47(4) 286-297 2003年
サツマイモ (lpomoea batatas (L.) Lam., 品種ベニアズマ) の単節単葉を増殖体として用い, 栽植密度 (D) を225, 473, 840および1313m-2として増殖および苗化した.育成した母株およびセル成型苗の生育量, およびそれらの育成に関わる電気エネルギ消費量を調べた.増殖サイクルは18日間, 苗化期間は15日間とした.実験期間中は気温30℃, 相対湿度75%, 光合成有効光量子束100/200/300μmolm-2s-1 (実験0-4/5-9/10日目以降) , 明期16hd-1, CO2濃度1000μmolmol-1とした.育成実験で得られた測定値より, 数理モデルを用いてサイクルを繰り返した場合の増殖体生産数 (N (n) , n: 繰り返し数) および苗あたりの電気エネルギ消費量 (Et (n) ) を推定した.さらに, 苗の定植後の生育量も調べた.閉鎖型苗生産システム内のトレイの収容面積に制約が無く、トレイを置く場所が不足しない場合、サイクルの経過に伴うN (n) の増大の割合はDが225m-2のときに最大となった.一方, システム内のトレイの収容面積が、その最大値とした500m2に達した後は, Dが840m-2のときにN (n) が最大となった.Ep (n) は, システム内のトレイを収容する面積の制約の有無にかかわらずDが840m-2のときに最小 (1.15MJ, 電力料金4.3~4.5円) となった.Dの増大とともに圃場に定植後の塊根収量は減少した.閉鎖型システムにおいて栄養繁殖による苗生産を効率的に行うためには, 短期間で増殖体生産数および苗当たりの電気エネルギ消費量を, Dなどを変数として, 適切に管理する方法を考案する必要がある.