和田 有理, 村田 千代栄, 平井 寛, 近藤 尚己, 近藤 克則, 植田 一博, 市田 行信
厚生の指標 61(11) 7-12 2014年9月
目的 本研究では,高齢者抑うつ尺度(Geriatric Depression Scale)の短縮版であるGDS5の日本語版について,高齢者を対象とした調査(AGESプロジェクト)の縦断データを用いて,要介護認定,死亡,要介護認定または死亡(健康寿命の喪失)のリスクを評価する際の予測的妥当性を検証した。方法 2003年10月,東海地方の介護保険者6自治体の協力を得て,各市町に居住する65歳以上高齢者29,374名を対象とした自記式アンケート郵送調査を行った。調査回答者14,286名(回収率48.6%)のうち,年齢または性別のデータが無効な者(n=1,533),あるいは歩行,入浴,排泄のうち1つ以上が自立していない,または無回答の者(n=1,295)を除いた11,753名を4年間追跡した。目的変数として,要介護認定,死亡,健康寿命の喪失を用いた。説明変数はGDS5とした。調整変数として,年齢,性別,教育年数,等価所得,治療中の疾病の有無,主観的健康感を用いた。Cox比例ハザード回帰分析を用いて,要介護認定,死亡,健康寿命の喪失についてのハザード比を求めた。結果 年齢,性別,教育年数,等価所得,治療中の疾病の有無,主観的健康感について調整した上で,GDS5と要介護認定,死亡,健康寿命の喪失との関連をみたところ,いずれについても「うつなし」に対して「うつ傾向(要介護認定:HR=1.263,死亡:HR=1.331,健康寿命の喪失:HR=1.292)」が有意に高いハザード比を示した。考察 GDS5の日本語版について,要介護認定,死亡,健康寿命の喪失のリスクを評価する際の予測的妥当性を示すことができた。(著者抄録)