研究者業績

平崎 能郎

Yoshiro Hirasaki

基本情報

所属
千葉大学 大学院医学研究院和漢診療学
(兼任)和漢診療科 診療科長
学位
医学博士(2010年3月 千葉大学)

連絡先
hrskyshrchiba-u.jp
J-GLOBAL ID
202001008064131025
researchmap会員ID
B000381655

漢方内科を専門とする臨床医ですが、癌に対して抑制効果のある生薬および天然化合物を研究しています。

論文

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  • Atsushi Chino, Hideki Okamoto, Yoshiro Hirasaki, Keigo Ueda, Keiko Ogawa, Takao Namiki
    JOURNAL OF ALTERNATIVE AND COMPLEMENTARY MEDICINE 17(11) 1075-1077 2011年11月  査読有り
    Objectives: Breast cancer is the fourth most frequent cause of death, and it is currently the most frequent cause of death among Japanese women. As to breast cancer therapy, lengthy hormonal therapy is very important for the treatment and prevention of recurrence. Aromatase inhibitors (AIs) are the initial drug of choice for postoperative adjuvant therapy of breast cancer in Japan. AIs require long-term use and occasionally cause serious side-effects. In this report, the effects of Kampo medicines (Japanese traditional medicines) on AIs-induced side-effects are described. Subject: A 55-year-old woman visited the Kampo outpatient department of Chiba University Hospital for atypical genital bleeding and arthralgia. At the age of 54, she suffered from left breast cancer and underwent left total mastectomy followed by chemotherapy for 6 months. Afterwards, 1 mg/day of anastrozole, one of the AIs, was used for therapy. Three (3) months later, atypical genital bleeding from vaginal mucosa and joint pains of bilateral hands and knees occurred as side-effects of anastrozole. Her attending doctor could only prescribe nonsteroidal external medicine for the inflammation of vaginal mucosa and do close follow-up. However, her symptoms showed no improvement. Interventions and outcome: Her deficiency of both ki (qi) and ketsu (Blood) was diagnosed based on Kampo diagnostics. Juzentaihoto was used for treatment. After taking juzentaihoto for 5 weeks, the atypical genital bleeding disappeared, and she no longer need topical medicine. Because her arthralgia showed no improvement, powdered processed aconitine root was added. After taking 3.0 g/day of this medication, her arthralgia almost completely disappeared. Conclusions: Controlling the side-effects is a clinical issue from the viewpoint of adherence to drug treatment. Kampo therapy should be considered one of the choices for side-effects in the process of cancer treatment.
  • 平崎 能郎, 地野 充時, 岡本 英輝, 植田 圭吾, 笠原 裕司, 荘 明仁, 江部 洋一郎, 並木 隆雄, 寺澤 捷年
    漢方の臨床 58(10) 1977-1990 2011年10月25日  筆頭著者
    55歳女性。特に誘因なく下痢に続き39℃の発熱、更にこめかみから前頭部にかけての激しい頭痛が出現して来院となった。頭痛と心下痞硬を目標に桂枝人参湯エキスが投与されたが改善を認めず、頻回の水様下痢が持続した。強い炎症反応を認めたため入院後、東洋医学的所見では顔色青白で、脈診は浮・緊・脈力中間、舌診は舌質が正常で腫大・微黄白苔・歯痕なしであった。また、腹診は腹力中等度・腹直筋攣急・心下痞硬で、検査所見では電解質異常や炎症反応が認められた。以上より処方として微黄白苔と心下痞硬所見から半夏瀉心湯エキスに転方したが、服用直後に嘔吐したため証を再検討したところ、こめかみから前頭部にかけての激しい頭痛、入院前後から出現した頸のこり、心下痞硬、加えて無汗、尿量減少傾向から桂枝去桂加茯苓白朮湯証と考えられた。以後、煎液と補液の併用服用の結果、速やかに尿が出始め、頭痛や頸のこり、嘔気も改善し、食事も摂取できるようになった。更に下痢の間隔もそれまでの20分毎から30分以上空くようになり、炎症所見も速やかに改善して退院となった。
  • Hirasaki Yoshiro, Nobuyasu Sekiya, Atsushi Chino, Keigo Ueda, Hideki Okamoto, Takao Namiki
    ALTERNATIVE THERAPIES IN HEALTH AND MEDICINE 17(5) 26-30 2011年9月  査読有り筆頭著者
    Patients undergoing chemotherapy often develop symptoms of neurological side effects such as numbness, pain, and weakness in a stocking-and-glove pattern. Yet few therapies are available to treat this condition. We examined the efficacy of therapy based on Kampo diagnosis in three cases of chemotherapy-induced peripheral neuropathy (CIPN). These patients all had severe cases, and the symptoms of CIPN interfered with their daily lives even after the cessation of the offending drugs. Early cessation of the drug therapy would be ideal, but in some cases where chemotherapies were effective against cancer, CIPN was worsened by prolonged administration. With the initiation of therapy based on Kampo diagnosis, the subjects of these case reports showed marked improvement in their daily activities. The Kampo diagnosis of CIPN is not only Jinkyo, as Tankaku, Kiutsu, and other Kampo clinical conditions can be candidates. We consider that the traditional way of Kampo diagnosis can provide options for the treatment of CIPN. (Altern Ther Health Med. 2011;17(5):26-30.)
  • 來村 昌紀, 並木 隆雄, 関矢 信康, 笠原 裕司, 地野 充時, 平崎 能郎, 小川 恵子, 奥見 裕邦, 岡本 英輝, 木俣 有美子, 植田 圭吾, 王子 剛, 大野 賢二, 山本 智史, 秋葉 哲生, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 62(4) 574-583 2011年7月20日  査読有り
    日本頭痛学会出版の慢性頭痛の診療ガイドラインにおいて小児片頭痛の急性期治療にはイブプロフェンやアセトアミノフェンが推奨されている。しかし、小児片頭痛における予防治療はまだ確立されていない。今回、我々は小児片頭痛、小児周期性症候群に対する漢方治療の有用性を検討した。対象は8歳から15歳の小児片頭痛あるいは小児周期性症候群と診断した9例で、9例全例で頭痛頻度の軽減、強度の減少、頭痛にともなう腹痛、めまい、悪心、嘔吐の改善をみた。Headache Impact Test-6(HIT-6)では治療前平均63.66点が治療後45.77点に改善した。漢方治療は小児片頭痛、小児周期性症候群に対して有効であると考えられた。(著者抄録)
  • Yoshiro Hirasaki, Chiaki Iwamura, Masakatsu Yamashita, Toshihiro Ito, Masayuki Kitajima, Kenta Shinoda, Takao Namiki, Katsutoshi Terasawa, Toshinori Nakayama
    CLINICAL IMMUNOLOGY 139(3) 267-276 2011年6月  査読有り筆頭著者
    Repressor of GATA (ROG) inhibits Th2 cell differentiation and allergic airway inflammation in the lung. To determine the role of ROG in the pathogenesis of contact hypersensitivity (CHS), a hapten-induced mouse model of CHS using ROG Tg and ROG-deficient (ROG(-/-)) was used. ROG Tg mice showed little ear swelling, while ROG(-/-) mice showed enhanced ear swelling in comparison to wild type mice. Interstitial edema and mast cell degranulation at the local inflammation sites were mild in ROG Tg mice and exacerbated in ROG(-/-) mice. In addition, the serum total IgE and hapten-specific IgG1 levels were increased in ROG(-/-) mice. Adoptive transfer of ROG(-/-) CD4(+) T cells exacerbated CHS in wild type mice, while transfer of ROG Tg CD4(+) T cells resulted in the attenuation of CHS. These results indicate ROG negatively regulates the induction of CHS by controlling the CD4(+) T cell-mediated allergic responses, including IgE generation and mast cell degranulation. (C) 2011 Elsevier Inc. All rights reserved.
  • 平崎 能郎, 地野 充時, 佐藤 明男, 高橋 久美子, 岡本 英輝, 植田 圭吾, 笠原 裕司, 來村 昌紀, 関矢 信康, 大野 賢二, 奥見 裕邦, 並木 隆雄
    漢方の臨床 58(2) 263-270 2011年2月25日  筆頭著者
    症例1(70歳男性)。4年前に脳出血を発症、四肢麻痺が残り、1年10ヵ月前頃からは吃逆が出現し、これが一日中持続するようになったため来院となった。初診時、東洋医学的所見では眼光はさえず、ややボヤッとしており、脈候は沈数やや弱、舌候は舌質軽度暗赤色・無苔、腹候は腹力中等度で右胸脇苦満と腹直筋攣急、小腹不仁が認められた。対処として柴胡桂枝湯+芍薬甘草湯、柴胡桂枝湯+桂枝加芍薬湯、四逆散+香蘇散などの投与が行われたが効果がなく、1年7ヵ月後、証の再検討により陽明病期・気滞と考え、大承気湯へ変方した結果、著効が得られた。症例2(69歳男性)。左大脳半球に多発性脳梗塞を認め、保存的治療により軽度右上肢麻痺を残すのみとなったが、3週間後に左内頸動脈にステント留置術を行ったところ、嚥下障害が出現した。MRIにて小脳から延髄に及ぶ梗塞が新たに認められ、ラダラボンの投与で嚥下障害は改善したが、この頃より吃逆が出現、症例1と同様の所見から陽明病期・少陽病期併存と考え、大承気湯合大柴胡湯加橘皮の投与を行った結果、服薬4日目には吃逆が減少、2週間後には消失し、その後、患者はリハビリ目的で転院となった。
  • 大野 賢二, 関矢 信康, 並木 隆雄, 笠原 裕司, 地野 充時, 平崎 能郎, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 62(1) 29-33 2011年1月20日  査読有り
    千葉大学医学部附属病院和漢診療科の入院患者が入退院時に内服していた薬剤およびその薬剤費を調査した。対象は2006年9月から2008年10月の間に入院した患者のうち、治療目的以外の入院や急性疾患を除外した35名とした。疾患内訳は多岐に渡っていたが、転帰が死亡、悪化した症例は認められなかった。西洋薬の薬剤数は入院前後で平均3.7剤から2.7剤へと減少し、その薬剤費は1日当たり302.1円より227.6円へ平均74.5円推計学的に有意に減少した。一方、漢方薬の薬剤費も入院前後で減少した。また、総薬剤費は入院前後で1日当たり平均437.8円から348.0円へと有意に減少し、約20%節減できた。以上の結果より、種々の疾患に漢方薬を適正使用することで、患者の病状が改善すると同時に薬剤費および医療費節減という医療経済的有用性がもたらされる可能性が示された。(著者抄録)
  • 木俣 有美子, 関矢 信康, 笠原 裕司, 地野 充時, 平崎 能郎, 小川 恵子, 岡本 英輝, 植田 圭吾, 大野 賢二, 並木 隆雄, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 62(1) 48-52 2011年1月20日  査読有り
    左腎盂形成術および子宮筋腫手術に関連して生じた慢性疼痛に対し、漢方治療が奏効した1例を経験した。症例は55歳女性。左腎盂尿管移行部狭窄症に対する左腎盂形成術と、その後生じた子宮筋腫術後の骨盤内癒着による尿管狭窄に対する長期尿管ステント留置が為された。しかし術後の疼痛が慢性化し徐々に増強、ステントに伴う疼痛・不快感も持続し抑うつ傾向も出現、和漢治療を勧められ当科受診となった。気虚、気鬱、水滞を目標に茯苓飲合半夏厚朴湯を処方したところ、疼痛に改善を認めた。慢性疼痛患者に対する、気の失調病態を考慮した漢方治療の有用性が示唆された。(著者抄録)
  • 平崎 能郎, 岩村 千秋, 中山 俊憲
    臨床免疫・アレルギー科 53(6) 583-589 2010年6月  筆頭著者
  • 地野 充時, 関矢 信康, 大野 賢二, 平崎 能郎, 笠原 裕司, 並木 隆雄, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 61(1) 45-50 2010年1月20日  査読有り
    Wells'症候群は四肢や体幹に孤立性あるいは多発性の蜂窩織炎様皮疹を生じる原因不明の疾患である。本症は副腎皮質ステロイド剤等で対症的に治療されるが、寛解と再発を繰り返すことも多い。症例は8歳男子。2001年に四肢に皮疹が出現し、2002年に病理組織学的検査によりWells'症候群と診断され、副腎皮質ステロイド剤などで治療されていた。2007年1月頃から皮疹が増悪し、同年5月当科初診。荊芥連翹湯を処方しやや改善が見られたが、その後増悪を認めたため同年6月に十味敗毒湯に転方。皮疹の改善を認めていたが、同年11月から皮膚乾燥を認めるようになったため、荊芥連翹湯を併用。これにより、皮膚の状態は安定し、現在まで経過良好である。我々が検索した範囲では和漢薬を用いた本症の治療報告は認められない。本症の治療として和漢薬治療が選択肢となることを示唆する症例と考えられた。(著者抄録)
  • Atsushi Chino, Hideki Okamoto, Yoshiro Hirasaki, Katsutoshi Terasawa
    ALTERNATIVE THERAPIES IN HEALTH AND MEDICINE 16(1) 62-64 2010年1月  査読有り
  • 大野 賢二, 関矢 信康, 長谷川 敦, 角野 めぐみ, 平崎 能郎, 久永 明人, 地野 充時, 笠原 裕司, 並木 隆雄, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 60(6) 595-605 2009年11月20日  査読有り
    【目的】漢方薬、特に煎じ薬の調剤や服薬指導の現状および問題点を明らかにするためにアンケート調査を実施した。【対象】千葉大学医学部附属病院・和漢診療科の院外処方箋を応需している保険調剤薬局全15店舗を対象とした。【結果】12店舗の薬局が現行(一律190点)の煎じ薬の調剤料が低いと回答した。生薬専用の分包機を導入していない薬局の調剤時間は、導入している薬局と比較して2倍であった。薬局からの要望では、処方日数や生薬薬味数に準じた調剤料および生薬薬価の見直しが多く挙げられた。また、調剤や服薬指導に従事する薬剤師の約半数が漢方薬に関する知識不足を認識していた。【総括】今後、煎じ薬を調剤できる薬局を確保するためには、煎じ薬の調剤を取り巻く経済的な問題の改善が必要と考えられた。また、漢方薬に精通した薬剤師の育成のため、大学における卒前・卒後教育体制の整備も併せて必要と考えられた。(著者抄録)
  • 橋本 すみれ, 関矢 信康, 笠原 裕司, 島田 博文, 木俣 有美子, 奥見 裕邦, 小川 恵子, 来村 昌紀, 大野 賢二, 平崎 能郎, 地野 充時, 並木 隆雄, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 60(6) 607-610 2009年11月20日  査読有り
    神経因性膀胱による排尿障害に対し半夏白朮天麻湯が有効であった症例を経験した。症例は71歳男性。排尿障害があり、泌尿器科にて弛緩性神経因性膀胱の診断の下、自己導尿と内服薬にて加療されていたが改善が認められなかった。気虚、水滞、気鬱を目標に半夏白朮天麻湯を使用したところ、排尿障害が著明に改善し、自己導尿から離脱し、西洋薬を中止することができた。神経因性膀胱に対する漢方治療は、補腎剤や利水剤、駆お血剤などが処方される症例が多いが、気虚、水滞を伴う排尿障害では半夏白朮天麻湯が有効である可能性が示された。(著者抄録)
  • 関矢 信康, 平崎 能郎, 小川 恵子, 来村 昌紀, 橋本 すみれ, 奥見 裕邦, 木俣 有美子, 久永 明人, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 60(6) 641-646 2009年11月20日  査読有り
    苓甘姜味辛夏仁湯は『金匱要略』を原典とし、慢性の呼吸器、鼻疾患に用いられてきた処方であり、その脈状は沈弱と理解されることが多かった。我々は浮脈を呈するアレルギー性鼻炎の症例に苓甘姜味辛夏仁湯を投与して奏効した。その症例の経験に基づき、2007年1月から2008年3月までに当科を受診した患者のうち、同様の脈状を有し、鼻汁、鼻閉等の鼻症状あるいは喘鳴、息切れ等の呼吸器症状を呈していた16例に本方を4週間投与し、検討をおこなった。その結果、苓甘姜味辛夏仁湯は投与した全ての症例において有効であった。また特徴的な他覚所見として成人の有効例においては全例に心下痞硬が認められ、胃部振水音あるいは心窩部の冷えを伴っていた。(著者抄録)
  • 笠原 裕司, 小林 豊, 地野 充時, 関矢 信康, 並木 隆雄, 大野 賢二, 来村 昌紀, 橋本 すみれ, 小川 恵子, 奥見 裕邦, 木俣 有美子, 平崎 能郎, 喜多 敏明, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 60(5) 519-525 2009年9月20日  査読有り
    奔豚と思われた諸症状に呉茱萸湯エキスと苓桂朮甘湯エキスの併用が奏効した症例を6例経験した。5例はパニック障害、1例は全般性不安障害と推定され、6例いずれも、動悸、吐き気、めまい、頭痛やそれらに随伴する不安感などを訴えて、肘後方奔豚湯証と考えられた。呉茱萸湯エキスと苓桂朮甘湯エキスの併用投与で症状軽快し、あるいは肘後方奔豚湯からの変更で症状は再発しなかった。呉茱萸湯エキスと苓桂朮甘湯エキス併用は肘後方奔豚湯の代用処方として奔豚の治療に有効である可能性が示された。(著者抄録)
  • 大野 賢二, 寺澤 捷年, 関矢 信康, 鎌田 憲明, 地野 充時, 笠原 裕司, 平崎 能郎, 並木 隆雄
    日本東洋医学雑誌 60(5) 539-543 2009年9月20日  査読有り
    冷え症と口内炎を伴う原因不明の結節性紅斑に対して漢方治療が奏効した一例を経験した。患者は44歳女性で月に数回、両側下腿伸側を中心に有痛性紅斑が出没した。清熱補気湯で口内炎の改善を認めたが結節性紅斑には効果を示さなかった。そこで裏熱と気逆の症候があることから、清熱補気湯証と白虎加桂枝湯証の併病と考え隔日交互服用としたところ、結節性紅斑の再発を認めなくなった。本症例のような複雑な病態の治療にあたっては併病の可能性も考慮すべきだと考える。(著者抄録)
  • 関矢 信康, 笠原 裕司, 地野 充時, 並木 隆雄, 平崎 能郎, 来村 昌樹, 小川 恵子, 橋本 すみれ, 大野 賢二, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 60(4) 443-447 2009年7月20日  査読有り
    茯苓飲合半夏厚朴湯あるいは半夏厚朴湯の奏効した凍瘡の4症例を経験した。4例に共通した他覚所見として舌の腫大、臍上悸、腹部の鼓音が認められた。さらに触診上、手関節および足関節より末梢では体幹から遠位であるほど体表温度の低下を認めた。4症例には、いずれも著明な気うつおよび水毒の症候があり、そのうち茯苓飲合半夏厚朴湯を投与した2症例においては強い気虚の状が認められた。いずれの症例においても効果の発現が速やかであった。通常の西洋医学的あるいは漢方医学的治療に応じない凍瘡に対して、茯苓飲合半夏厚朴湯および半夏厚朴湯は試用する価値のある処方と考えられた。(著者抄録)
  • 地野 充時, 関矢 信康, 大野 賢二, 橋本 すみれ, 小川 恵子, 来村 昌紀, 平崎 能郎, 笠原 裕司, 喜多 敏明, 並木 隆雄, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 60(4) 459-463 2009年7月20日  査読有り
    手術そのものは成功したにもかかわらず、器質的原因が明確でない様々な愁訴が手術後に出現することがある。今回、開腹術後に出現した愁訴に対し、香蘇散料が有効であった2症例を経験した。主訴は症例1では食欲不振、症例2では不安感であった。いずれの症例も和漢診療学的には気鬱と考え、香蘇散料を処方したところ、速やかに症状の改善を認めた。香蘇散は和漢診療学的には気鬱を改善する処方であるが、我々が検索した限りでは開腹術後に出現した愁訴に香蘇散が有効であったという報告はない。開腹術後愁訴はQOL低下の原因となり、ひいては医療不信につながる可能性もある重要な問題である。今回提示した症例のように開腹術後愁訴に対する和漢薬治療の導入は、有用な治療の選択肢になりうると考えられる。(著者抄録)
  • 関矢 信康, 笠原 裕司, 地野 充時, 並木 隆雄, 平崎 能郎, 来村 昌紀, 小川 恵子, 橋本 すみれ, 奥見 裕邦, 木俣 有美子, 島田 博文, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 60(4) 465-469 2009年7月20日  査読有り
    桂枝加苓朮附湯は『方機』を出典とし、神経痛や関節痛を目標に使用されてきた。今回、我々はクローン病、子宮内膜症、直腸癌術後、急性胃腸炎、メニエル病に対して本方を投与し、奏効した諸例を経験した。本方を処方する際には『皇漢医学』に記載されているように桂枝加芍薬湯と真武湯あるいは苓桂朮甘湯の方意を持つことを念頭に置くことが重要であり、様々な疾患に対して応用が可能であると考えられた。(著者抄録)
  • 來村 昌紀, 寺澤 捷年, 関矢 信康, 地野 充時, 橋本 すみれ, 並木 隆雄, 王子 剛, 小川 恵子, 大野 賢二, 平崎 能郎, 笠原 裕司, 林 克美
    日本東洋医学雑誌 60(3) 365-369 2009年5月20日  査読有り
    閉塞性動脈硬化症による下肢潰瘍は抗血小板療法や抗凝固療法などの保存的治療に抵抗性の場合、下肢切断術が必要とされる重症の虚血病変である。今回、我々は自家製桂枝茯苓丸と大柴胡湯を投与し、閉塞性動脈硬化症による間欠性跛行と下肢潰瘍が改善した73歳男性の症例を経験したので報告する。この症例の経験により閉塞性動脈硬化症による虚血性病変に対し、西洋医学的な抗凝固療法、抗血小板療法に、桂枝茯苓丸や大柴胡湯を併用することで微小循環改善作用が加わり、虚血病変を安全に少ない負担で改善できる可能性があることが示唆された。(著者抄録)
  • 笠原 裕司, 関矢 信康, 地野 充時, 並木 隆雄, 大野 賢二, 来村 昌紀, 橋本 すみれ, 小川 恵子, 平崎 能郎, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 60(3) 385-389 2009年5月20日  査読有り
    腎癌術後に多彩な腹部症状を訴えた症例に対し、漢方治療が奏効した一症例を経験した。症例は58歳女性。腹腔鏡下右腎摘出術直後に嘔気、噫気、心窩部痛、下腹痛、食欲不振等が出現。消化器内科における諸検査に異常なく、治療にても軽快しなかった。胸中痰飲による嘔気、噫気と考えて茯苓飲加大黄を投与したところ1週間で嘔気、噫気は消失し、安中散料加大黄に転方後、心窩部痛、下腹痛、食欲不振も消失した。(著者抄録)
  • 関矢 信康, 並木 隆雄, 笠原 裕司, 地野 充時, 平崎 能郎, 小川 恵子, 来村 昌紀, 橋本 すみれ, 大野 賢二, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 60(2) 145-150 2009年3月20日  査読有り
    気鬱、気虚に水滞を兼ねた病態に対して茯苓飲合半夏厚朴湯が著効した3症例を経験した。これを基に気鬱、気虚に水滞を兼ねた30症例(男性6例、女性24例)に茯苓飲合半夏厚朴湯を投与したところ25症例で有効であった。有効例ではのぼせを自覚する者が比較的多くみられた。有効例で心窩部痛あるいは心窩部不快感を訴える場合には必ず動悸、胸焼け、胸部圧迫感、呼吸困難などの胸部症状を伴った。他覚所見では腹部動悸、胃部振水音が有効例に高率に認められた。茯苓飲合半夏厚朴湯を投与する場合に上記の自他覚所見の有無を確かめることでより高い精度で処方決定しうる可能性が示唆された。(著者抄録)
  • 橋本 すみれ, 地野 充時, 来村 昌紀, 王子 剛, 小川 恵子, 大野 賢二, 平崎 能郎, 林 克美, 笠原 裕司, 関矢 信康, 並木 隆雄, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 60(2) 171-175 2009年3月20日  査読有り
    線維筋痛症による全身の疼痛に対し、白虎湯加味方が有効であった症例を経験した。症例は65歳女性。自覚症状として、夏場に、あるいは入浴などで身体が温まると増悪する全身の疼痛および口渇、多飲があり、身熱の甚だしい状態と考えて、白虎湯加味方を使用したところ全身の疼痛が消失した。線維筋痛症に対する漢方治療は、附子剤や柴胡剤が処方される症例が多いが、温熱刺激により全身の疼痛が悪化する症例には白虎湯類が有効である可能性が示唆された。(著者抄録)
  • 並木 隆雄, 笠原 裕司, 関矢 信康, 地野 充時, 林 克美, 平崎 能郎, 大野 賢二, 来村 昌紀, 小川 恵子, 橋本 すみれ, 小川 真生, 喜多 敏明, 長谷川 敦, 中村 貴子, 北田 光一, 飯沼 君子, 濱野 孝子, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 60(2) 185-193 2009年3月20日  査読有り
    【目的】和漢診療による病院での入院加療開始時の煎じ薬を含む漢方薬処方の問題点を明らかにするため、当院の薬剤師と和漢診療科病棟担当看護師にアンケート調査を行った。【方法】薬剤師に対しては漢方薬の取扱、調剤時リスクおよび服薬指導に関して、看護師には西洋薬と比較し、配薬時の取扱リスクについて質問した。【結果】アンケートは漢方薬担当薬剤師7名全員、病棟看護師16名中14名が回答した。薬剤師は調剤に手間がかかる点を指摘したが、西洋薬に比較して調剤リスクはないと回答した。服薬指導経験者は1名のみであった。看護師は煎じ薬のみ、やや扱いにくいと考えていたがリスクは同じと考えていた。【総括】薬剤師と看護師ともに煎じ薬について、やや取り扱いにくいがリスク・管理での問題は少ないと考えていた。入院治療の開始までの医師、薬剤師、看護師、事務部門との十分な打ち合わせと教育が重要と考えられた。(著者抄録)
  • 関矢 信康, 並木 隆雄, 笠原 裕司, 地野 充時, 林 克美, 平崎 能郎, 小川 恵子, 来村 昌紀, 橋本 すみれ, 大野 賢二, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 59(6) 793-798 2008年11月20日  査読有り
    清湿化痰湯は『壽世保元』を出典とし、肋間神経痛およびこれに類する胸背部の疼痛に用いられてきた方剤である。今回、我々は胸郭に疼痛あるいは冷えを訴える5症例に対して清湿化痰湯を投与し、4症例に有効、1症例には無効であった。有効例、無効例と文献的検討から清湿化痰湯を投与する際には、移動性の胸郭の冷え、水毒の症候が多く認められること、脈状は浮ではないこと、炎症による胸郭の疼痛では肺の失調病態に伴うものであることに留意すべきであると考えられた。(著者抄録)
  • 來村 昌紀, 橋本 すみれ, 小川 恵子, 平崎 能朗, 大野 賢二, 寺澤 捷年, 地野 充時, 笠原 裕司, 関矢 信康, 並木 隆雄
    日本頭痛学会誌 35(2) 106-106 2008年11月  査読有り
  • 関矢 信康, 桧山 幸孝, 並木 隆雄, 笠原 裕司, 地野 充時, 林 克美, 小暮 敏明, 巽 武司, 柴原 直利, 喜多 敏明, 平崎 能郎, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 59(4) 623-631 2008年7月20日  査読有り
    防已黄耆湯は『金匱要略』を原典とする処方で、水太り体質を目標に肥満、浮腫、関節炎等に用いられてきた。我々は、その条文にある風湿あるいは風水と考えられる症候を目標に防已黄耆湯を投与して奏効した5症例を経験した。これらの症例では自覚的に汗をかきやすい・盗汗、身体の冷えおよび夕刻の症状悪化が共通しており、他覚的には脈状が浮・弦・渋、右寸口の緊張が弱いことが共通していた。この経験を基に、これらの症候を満たす10症例に防已黄耆湯エキスを投与したところ、8例で有効であった。このことから本方証の決定に当っては、風湿・風水の病態を念頭に置いた問診と特徴的な脈状が重要であると考えられた。(著者抄録)
  • 関矢 信康, 並木 隆雄, 笠原 裕司, 大川 徹, 地野 充時, 大野 賢二, 平崎 能郎, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 59(2) 297-301 2008年3月20日  査読有り
    喉頭肉芽腫は声帯後部に生じる非特異性肉芽腫性病変で発症要因が多岐にわたるとともに確立された治療方針がないことから、再発例が多く治療に難渋する疾患とされている。西洋医学的治療に抵抗性で再発を繰り返した特発性喉頭肉芽腫に解労散が奏効した一例を経験した。症例は30歳、男性。外科的切除後に再発し、再度の外科的切除とレーザー焼灼およびプロトンポンプ・インヒビター、トラニラスト内服、マクロライド少量持続内服療法、ステロイド吸入などが施行されたが再発し漢方治療を併用した。半夏厚朴湯、柴芍六君子湯および桂姜棗草黄辛附湯では肉芽腫には変化ないため解労散に転方し、その3週間後には肉芽腫は内視鏡にて消失が確認され、その後の再発はない。本症例の経験から倦怠感、体重減少、両側胸脇苦満、両側腹直筋緊張、臍上悸、臍下悸、上腹部を中心とした鼓音の存在などが解労散の使用目標となりうる可能性が示唆された。(著者抄録)
  • 寺澤 捷年, 関矢 信康, 並木 隆雄, 笠原 裕司, 地野 充時, 大野 賢二, 平崎 能郎
    日本東洋医学雑誌 59(2) 303-307 2008年3月20日  査読有り
    麗沢通気湯は『蘭室秘蔵』収載の方剤であるが、その治験報告はこれまでに一症例の記載に止まっている。著者らは最近、本方に散風通竅の効能がある辛夷を加味した方剤を用いたところ、40年来、諸治に応じなかった常習性頭痛(65歳・男性)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯で完治しえなかった気管支喘息(38歳・女性)で著効を得た。また気管支アミロイドーシス(40歳男性)では原疾患の退縮は得られていないが、末梢での酸素飽和度と自覚症状の明らかな改善を見たので、文献的考察等も含め報告する。(著者抄録)
  • 地野 充時, 関矢 信康, 大野 賢二, 平崎 能郎, 林 克美, 笠原 裕司, 喜多 敏明, 桧山 幸孝, 並木 隆雄, 済木 育夫, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 59(1) 63-71 2008年1月20日  査読有り
    十全大補湯が有効であった皮膚疾患3例を経験した。十全大補湯は伝統的に気血両虚の病態に使用され、現在では様々な皮膚疾患にもしばしば応用されている方剤である。自然免疫系の受容体であるToll-like receptors(TLRs)が抗原提示細胞に発現していることが近年明らかになっているが、我々は以前、十全大補湯がマウス腹腔滲出細胞において、TLR4シグナル伝達経路に影響を及ぼし、interleukin-12(IL-12)およびinterferon-γ(IFN-γ)産生を増強することを報告した。表皮にも抗原提示細胞であるLangerhans細胞が存在するため、十全大補湯がLangerhans細胞のTLRシグナル伝達経路に作用しTh1/2バランスを改善している可能性がある。皮膚疾患に対する十全大補湯の作用機序の一つとして、自然免疫系を介する獲得免疫系への影響を示唆する症例と考えられた。(著者抄録)
  • 並木 隆雄, 関矢 信康, 笠原 裕司, 地野 充時, 林 克美, 平崎 能郎, 大野 賢二, 桧山 幸孝, 喜多 敏明, 林 秀樹, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 58(6) 1113-1119 2007年11月20日  査読有り
    目的:皮膚の湿潤の程度(肌水分)を客観的に評価するため、肌水分計を用いて数値化した。その測定値の再現性および測定部位別の差異の検討を行った。方法:[検討1]健常男性6名の合計66ヶ所を約1-2週間おいて2回測定し、測定値の再現性を検討。[検討2]皮膚疾患以外で通院中の患者81名について、男女、年齢別に身体各部位の肌水分を測定。測定部位は顔面、胸部、背部、腹部、前腕(左右の尺側と橈骨側の中央部)、手掌および下肢の10ヶ所とした。結果:[検討1]測定値の相関係数はr=0.716(p<0.0001)と良好な相関関係を認めた。[検討2]部位別では[顔面、胸部、背部]はいずれも[腹部、前腕4ヶ所、下肢]と比較して有意に湿潤し、手掌は前腕4ヶ所と比較して湿潤傾向にあった。性別では背部、腹部で男性が有意に湿潤していた。年齢別で有意差は認めなかった。臨床上簡便な肌水分の基準値としては前腕のどの場所の測定でも利用可能と考えられた。また肌水分率を四逆散使用の決定および経過観察に用いた症例を紹介した。結論:肌水分計による肌水分の測定は漢方診療での客観的指標として臨床での応用が今後期待される。(著者抄録)
  • 関矢 信康, 林 克美, 桧山 幸孝, 並木 隆雄, 笠原 裕司, 地野 充時, 大野 賢二, 喜多 敏明, 平崎 能郎, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 58(4) 723-728 2007年7月20日  査読有り
    漢方治療が奏効した蕁麻疹の4症例を経験した。内容はコリン性蕁麻疹2例、慢性特発性蕁麻疹1例、寒冷蕁麻疹1例であった。悪化要因として、第1例は義父の介護と子宮摘出術のストレス、第2例は家庭内の問題での精神的ストレス、第3例はパニック障害様のエピソード、第4例は家族に対する心配・不安を指摘できた。皮膚症状を改善する上での有効方剤は、それぞれ桂枝茯苓丸、半夏厚朴湯、抑肝散加陳皮半夏、加味逍遙散であった。これらの処方の選択を行う際に、皮膚症状に関与する心理的背景を聞きだし得たことが大いに役立った。心理的背景について繰り返し丁寧に問診を行うことは、蕁麻疹難治例の治療において有用であると考えられた。(著者抄録)
  • 関矢 信康, 林 克美, 地野 充時, 笠原 裕司, 並木 隆雄, 巽 武司, 小暮 敏明, 柴原 直利, 平崎 能郎, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 58(3) 481-485 2007年5月20日  査読有り
    半夏厚朴湯は『金匱要略』を原典とする処方で咽中炙臠を主要な目標として胃症状、神経症状、咽喉付近の症状あるいは浮腫を表すものに応用されてきた。今回、我々は肩甲間部の疼痛・凝りなどの違和感を訴える2症例に半夏厚朴湯エキスを投与し奏効した。この経験を基に気鬱・水毒の症候、肩甲間部違和感を有し、咽中炙臠を伴わない15症例に半夏厚朴湯を投与し検討を行った。その結果、全ての症例において愁訴の軽減とともに肩甲間部の違和感も軽減あるいは消失を認めた。このことから咽中炙臠を伴わない症例であっても胃部の停滞感、腹部膨満感、胃内停水、ガスの滞留といった従来用いられている目標に加えて肩甲間部、特に第4〜7胸椎棘突起両傍の違和感や圧痛の有無を証明することで、さらに本方の応用範囲が広がりうるものと考えられる。(著者抄録)
  • 関矢 信康, 林 克美, 地野 充時, 笠原 裕司, 並木 隆雄, 桧山 幸孝, 大野 賢二, 喜多 敏明, 平崎 能郎, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 58(2) 277-283 2007年3月20日  査読有り
    抑肝散加陳皮半夏は神経過敏、易興奮、易怒性、不安・不眠などの精神神経症状を目標に用いられてきた。我々は心下悸、臍上悸、臍下悸を顕著に認める腹証から慢性頭痛の6症例(緊張型頭痛1例、片頭痛2例、緊張型頭痛と片頭痛の混合型3例)に予防療法として抑肝散加陳皮半夏を投与し有効であった。今回の検討から抑肝散加陳皮半夏は緊張型頭痛のみならず片頭痛や混合型頭痛に対しても有効である可能性が示唆された。(著者抄録)
  • 貝沼 茂三郎, 平崎 能郎, 野上 達也, 犬塚 央, 宮坂 史路, 中村 佳子, 堀江 延和, 木村 豪雄, 三潴 忠道
    日本東洋医学雑誌 58(1) 57-60 2007年1月20日  査読有り
    三黄湯(千金方)が有効と思われた2症例を経験した。症例1は63才女性。多関節痛、手足の火照りを主訴に2004年12月当科初診。主訴に加えてイライラ、悪寒を目標に、三黄湯(千金方)を投与。Visual analogue scale(VAS)は初診時の100mmが、10ヵ月後の2005年10月には23mmまで改善した。症例2は62才女性。全身痛を主訴に2004年8月当科初診。種々の方剤が無効。2005年6月入院。全身痛、足の火照り、精神不安、悪寒を目標に三黄湯(千金方)に転方。VASでは入院時の80mmが、2ヵ月後には26mmまで改善した。三黄湯(千金方)は疼痛性疾患で、手足の火照り、精神症状、悪寒を伴うような場合にもっと積極的に投与すべきではないかと考えられた。(著者抄録)
  • 小尾 龍右, 鉄村 進, 平崎 能郎, 木村 豪雄, 古田 一史, 三潴 忠道, 嶋田 豊, 寺澤 捷年
    日本東洋医学雑誌 56(4) 577-583 2005年7月20日  査読有り
    早期胃癌に対する幽門側胃切除術後の食欲不振に香蘇散合六君子湯が奏効した一例を経験したので報告する.症例は71歳の男性.早期胃癌(O-IIa+IIc)と診断され幽門側胃切除術を施行された.術後に,嘔吐,食欲不振が出現し経口摂取が不能となった.内視鏡的バルーン拡張術,種々の西洋薬による薬物治療が試みられたが,術後46日を経過しても経口摂取が不能なままであった.そこで漢方治療の適応と判断され当科転科となった.中心静脈栄養を併用しながら漢方治療を開始した.香蘇散投与後から急速に経口摂取量が増加し,香蘇散合六君子湯に転方することで常食を摂取可能となり,術後90日で退院となった.胃切除後の食欲不振は心理的原因,器質的原因の双方で生じる可能性があり,心身の異常に対し,これを調和して治療可能な漢方治療の有効性が示唆された(著者抄録)
  • 平崎 能郎, 岡 洋志, 鉄村 進, 小尾 龍右, 木村 豪雄, 古田 一史, 三潴 忠道
    日本東洋医学雑誌 55(3) 319-324 2004年5月20日  査読有り筆頭著者
    77歳女.特に誘因なく喉の違和感と圧痛を自覚した.全身倦怠感と発熱をきたし,某医で急性上気道炎と診断され抗生剤と消炎鎮痛剤を処方された.解熱したが,次第に食欲が低下し,嘔気,嘔吐が出現したため,入院となった.圧痛を伴う甲状腺の腫大と高度の炎症所見,甲状腺機能亢進症を伴い,亜急性甲状腺炎と診断し,漢方単独治療を行った.太陽病と陽明病の併病と考え,桂枝二越婢一湯と調胃承気湯を併用した.17日後には甲状腺機能は正常となった
  • 木村 豪雄, 岡 洋志, 平崎 能郎, 鉄村 進, 古田 一史, 三瀦 忠道
    日本東洋醫學雜誌 54(5) 951-956 2003年9月20日  査読有り
    肝癌に伴う腹水と浮腫に対して防已椒目〓〓大黄丸料を使用し,興味ある効果を経験した。症例は80歳女性。2002年4月,急速に進行する対麻痺,膀胱直腸障害を呈した。転移性胸椎腫瘍の診断で手術されたが,術後より下肢浮腫と腹水を生じた。腹部CTにて肝硬変および肝癌が指摘された。腸満,口腔内の乾燥,便秘を目標として防已椒目〓〓大黄丸料を投与した。下肢の浮腫は速やかに軽減し,CTで腹水の減少が確認できた。しかし原疾患の進行に伴い,1カ月余りで効果は徐々に減弱した。悪性腫瘍に伴う腹水の治療は困難であるが,本方は腹水に対する有効な方剤として再注目すべきである。

MISC

 244

書籍等出版物

 6

講演・口頭発表等

 1

共同研究・競争的資金等の研究課題

 2