松澤 明美, 涌水 理恵, 西垣 佳織, 藤岡 寛, 佐藤 奈保, 岩田 直子, 岸野 美由紀, 山口 慶子, 佐々木 美輝子
小児保健研究 78(4) 334-342 2019年7月 査読有り
本研究の目的は、在宅生活する学齢期の障がい児の母親の就労とその関連要因を明らかにすることである。全国肢体不自由児PTA連合会に登録する全特別支援学校212校のうち、本研究の協力に承諾を得た89校を通じて、障がい児家族へ郵送法の無記名自記式質問紙調査を行った。調査票を4,707人に送付した結果、主養育者1,659人の返送があり(回収率35.2%)、回答者が男性、子どもの年齢・就労の欠損値を除外した1,501人を分析対象とした。本研究の分析対象の母親は、就労群580人(41.3%)、非就労群825人(58.7%)であった。多重ロジスティック回帰分析の結果、母親の就労に有意に関連があったのは、子どもの重症度が低い(OR=0.932、95%CI:0.904〜0.958)、健康関連QOLの精神的健康度が高い(OR=1.025、95%CI:1.003〜1.049)、祖父母の同居あり(OR=2.157、95%CI:1.407〜3.322)、家族機能のきずなが強い(OR=1.067、95%CI:1.011〜1.128)、サービス利用時間が長い(OR=1.067、95%CI:1.044〜1.092)であった。本研究の結果から、学齢期の障がい児を育てながら就労を希望する母親へ、祖父母を含む家族全体の協力、子どもの重症度に応じた必要なサービスが利用できる体制整備等の課題が示唆された。(著者抄録)