成田 凌, 長船 亜紀子
千葉大学人文公共学研究論集 = Journal of Studies on Humanities and Public Affairs of Chiba University (42) 35-52 2021年3月29日
[要旨]現在、農業の担い手不足が危惧される日本社会において、農業経営主となる女性の増加が期待されており、これまで農業に携わる女性にとってセットであった就農と婚姻の分節化が生じ始めているともいえる。本稿では、「農家の娘」として実家の農業を選好した若年のシングル女性農業者の家業継承と結婚に関する意識や実態について、青森県の20 ~ 30 歳代シングル女性農業者を事例に分析と考察をおこなった。その結果、次の 2 点が明らかになった。①東北地方の農家に多いとされる長男子単独相続(規範)の枠をこえて家族・親族に後継者として目され、かつ自身も後継者となることを選択して担っていた。②結婚に積極的か否か、結婚相手に家業への協力を求めるか否かにかかわらず、女性農業者たちは共通して、自身が就農して家業を継承していくことと、自身が次世代以降に家業や家系、家産を引き継いでいくことを明確に切り分けていた。