佐藤 紀子, 井出 成美, 宮崎 美砂子
千葉看護学会会誌 11(1) 79-86 2005年6月
日本文化を反映した地域健康支援の実践知を明らかにするにあたり,地域健康支援に関連する文献検討を行い,地域健康支援における「文化」の捉え方を検討した。方法は,(1)近隣領域のテキストおよび理論書に記載されている「文化」の記述の整理,(2)医学中央雑誌より「地域看護」,「地域保健」,「健康および地域」のそれぞれと「文化」の掛け合わせによる検索を行い,抽出文献を用いて健康支援と文化との関連の検討を行った。その結果,(1)23の成書より,文化の定義,文化の構成要素,看護および地域保健医療福祉における文化の位置づけが明らかになった。(2)地域健康支援と文化を関連させた研究は105編抽出され,それらは「健康文化まちづくり・政策」,「地域特性(風土等)・生活環境」,「文化にねざした保健・福祉・医療・看護」,「諸外国の健康実態および保健・福祉・医療」,「在日外国人の抱える問題および支援」,「子育て文化と支援」,「高齢者の生活実態と支援」,「女性の健康」,「比較文化」,「価値観」,「信仰・宗教」,「その他」の12項目に分類できた。文献検討により,地域健康支援の対象となる「個人」「家族」「地域」「健康・生活」は,文化によって規定されるものであり,それらはさまざまな他の要素との「関係性」のなかで成り立っていると理解することが重要であること,また,特定集団のパターンとしての均質的な見方に陥ることなく,「文化」はつくられ変化し続けていくという構築的な見方を意識することが重要であることが示唆された。