國分 尚, 安藤敏夫, 渡辺 均, 塚本達也, エデュアルド マルチェシ
Acta Phytotaxonomica et Geobotanica 50(2) 207-219 1999年12月 査読有り
既に報告したウルグアイにおけるPetunia axillaris subsp. axillarisとsubsp. parodiiの中間型の由来について考察するため,野生種子由来のsubsp. axillarisとsubsp. parodiiから正逆組み合わせのF_1,さらにF_2個体を育成し,花器形態の遺伝様式を調査した。特に,ウルグアイの2亜種を区別する重要な形質でありながら,今まで無視されてきた雄ずいの状態(2強または4強)に注目し,以前の研究者にも取り上げられている花筒長および花冠径とともに計測した。また,花筒長/花冠径比と,Kokubun et al.(1997;植物分類,地理48巻:173-185)の判別関数Z_<12>による判別得点を2次変数として分析に供した。その結果,各形質は量的に遺伝していたが,4強雄ずいはF_1個体には現われず,F_2になって初めて出現し,あたかも劣性遺伝子のようにふるまった。Subsp. axillarisとsubsp. parodiiよりも分散が大きく,それはsubsp. axillarisを母親にしたF_1個体にも継承された。F_1,F_2個体とも,計測値はおおむね両親の値の範囲に分布した。正逆の組み合わせを比較した場合,計測値は母親の値に近く,特にsubsp. axillarisを母親とした場合,subsp. axillarisとF_1・F_2個体の値の分布に重なりが見られた。このことは判別得点についても言え,前報でsubsp. axillarisと判定された群落の中にもsubsp. parodiiの遺伝子が浸透している可能性が示唆された。F_2個体では花筒が長いほど4強雄ずいに近くなる(subsp. parodiiに似る)傾向が示された。Colonia州のLa Plata川沿いに見られた中間型は本研究で得られたF_2個体の一部に似ており,この中間型が雑種起源である可能性が認められたが,FloresおよびSoriano州のNegro川下流域に見られた小輪の花をもつ中間型はsubsp. axillarisとsubsp. parodiiの交雑だけで説明することは難しいと思われた。