中村 伸枝, 岡田 忍, 石垣 和子
千葉大学看護学部紀要 28(28) 59-63 2006年3月 査読有り
近年,予防接種法の改正による予防接種率が低い成人や予防接種を行っていても抗体価が低下している成人の増加,高度医療を受ける患者や高齢患者の増加などを背景に,医療福祉施設や教育施設側のリスクマネージメントとしての感染対策が重要になっている.看護学部においても,感染症対策の必要性が議論され学生生活支援委員会が中心となり感染症対策が進められた.看護学部における感染症対策は,学生に対する抗体検査や予防接種に関する説明や掲示などを通して感染症に対する関心や知識を高めること,抗体検査を行う場の設定や費用負担の調整,教員の感染症に対する関心を高めること,学生の各種抗体の保有状況を把握することであった.3年間の活動の中で,学部学生が在学中に受検できる抗体検査に麻疹,風疹,水痘,おたふくかぜと,HBワクチン接種後の抗体検査が含まれるようになり,インフルエンザワクチンも附属病院で実施可能となった.しかし,看護学部生の28.4〜36.8%が麻疹抗体陰性であり,近年,急速に麻疹抗体の保有率が低下していることが伺えた.おたふくかぜの抗体が陰性であった学生も16.3〜26.8%と多く,麻疹・水痘の抗体が陰性であった学生も少数ではあるが存在していた.以上より,学生に対して感染症や予防接種に関する啓発を続けると共に,予防接種の場を設定したり費用補助を行うなど,予防接種を推進するための対策を進めていく必要があると考えられた.