山崎 由利亜, 正木 治恵, 高橋 良幸, 小池 潤, 錢 淑君, 田中 愛, 瀧澤 文雄
千葉大学大学院看護学研究科紀要 (41) 45-55 2019年3月 査読有り
体を使う機会が減少する社会や臨床現場の多様で複雑な状況の中で、看護学習者が一職業人となり看護の技能を身につけ実践に至るまでには、看護学習者の身体観の重要性が示唆されるにもかかわらず、研究の焦点は当てられてこなかった。よって本研究は、看護学習者の身体観を明らかにすることを目的として、フォーカスグループインタビューを行った。対象者は、看護基礎教育課程に所属する大学生7名と大学院博士および修士課程に所属する看護師資格を持つ大学院生13名の計20名であった。インタビューデータを質的帰納的に分析した結果、389コードから7カテゴリを得た。すなわち、【看護師へと作り上げる身体】【状況依存的に感覚が高まる身体】【相手の動きや呼吸のリズムに同調する身体】【アセスメントや実践の道具として活用される身体】【対人関係の中で外見となる身体】【環境に呼応する身体】【看護師として身体化された身体】が導かれた。結果より、看護学習者の身体観は、実習や交代制勤務など特有の生活規制や専門的知識・技術に馴染むように作り上げられ、生活体験や実践知が内在化し、臨床現場の複数の文脈に沿って多彩に見出された。その根底として、人間の身体の環境への呼応を捉えていた。看護学習者の身体観に着目することは、看護学習者の生涯を通した自己教育力の醸成を目指した教育プログラムの開発に役立つと考えられる。(著者抄録)