大学院理学研究院

高橋 佑磨

タカハシ ユウマ  (Yuma Takahashi)

基本情報

所属
千葉大学 大学院理学研究院 准教授
学位
博士(理学)(2010年11月 筑波大学)

研究者番号
00707622
ORCID ID
 https://orcid.org/0000-0003-1490-7837
J-GLOBAL ID
200901044418263380
researchmap会員ID
6000009346

外部リンク

生命現象には、遺伝子や細胞、組織、個体、個体群、群集、生態系などさまざまな階層があります。また、それぞれの階層では、個体発生や行動のスケール、生態的スケール、小進化的スケール、大進化的スケールなど、さまざまな時間スケールで生命の質的、量的な変化が観察されます。私は、これらの階層や時間スケールをシームレスに繋ぐような新しくて(できるだけ)スマートで、統合的な生命観やその理論的枠組みを構築することを目指しています。具体的には、遺伝的変異と行動的な個体間相互作用、進化動態、生態的動態、大進化動態を結びつける研究や、遺伝子発現の変異と発生の揺らぎ、表現型可塑性、小進化、大進化を結びつける研究、確率的な進化と適応進化、生態的動態を結びつけるような研究などを進めています。また、都市化や季節変動、生物時計に着目し、生物の急速な適応(新規環境への定着など)やその遺伝基盤やエピジェネティックな基盤を明らかにする研究も行なっています。

 


委員歴

 5

主要な論文

 39
  • Yuma Takahashi, Ryoya Tanaka, Daisuke Yamamoto, Suzuki Noriyuki, Masakado Kawata
    Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 285(1871) 2018年1月31日  査読有り筆頭著者責任著者
    Although genetic diversity within a population is suggested to improve population-level fitness and productivity, the existence of these effects is controversial because empirical evidence for an ecological effect of genetic diversity and the underlying mechanisms is scarce and incomplete. Here, we show that the natural single-gene behavioural polymorphism (Rover and sitter) in Drosophila melanogaster has a positive effect on population fitness. Our simple numerical model predicted that the fitness of a polymorphic population would be higher than that expected with two monomorphic populations, but only under balancing selection. Moreover, this positive diversity effect of genetic polymorphism was attributable to a complementarity effect, rather than to a selection effect. Our empirical tests using the behavioural polymorphism in D. melanogaster clearly supported the model predictions. These results provide direct evidence for an ecological effect of genetic diversity on population fitness and its condition dependence.
  • Yuma Takahashi, Kotaro Kagawa, Erik I. Svensson, Masakado Kawata
    NATURE COMMUNICATIONS 5 4468 2014年7月  査読有り筆頭著者責任著者
    The effect of evolutionary changes in traits and phenotypic/genetic diversity on ecological dynamics has received much theoretical attention; however, the mechanisms and ecological consequences are usually unknown. Female-limited colour polymorphism in damselflies is a counter-adaptation to male mating harassment, and thus, is expected to alter population dynamics through relaxing sexual conflict. Here we show the side effect of the evolution of female morph diversity on population performance (for example, population productivity and sustainability) in damselflies. Our theoretical model incorporating key features of the sexual interaction predicts that the evolution of increased phenotypic diversity will reduce overall fitness costs to females from sexual conflict, which in turn will increase productivity, density and stability of a population. Field data and mesocosm experiments support these model predictions. Our study suggests that increased phenotypic diversity can enhance population performance that can potentially reduce extinction rates and thereby influence macroevolutionary processes.

MISC

 8
  • 鶴井 香織, 高橋 佑磨, 森本 元
    生態誌 65(1) 33-37 2015年  
    クラインとは、連続した生息地において量的形質や対立遺伝子頻度が示す空間的に滑らかな地理的変化をさし、測定可能な変異の勾配として観察される。クラインは、古くから数多くの生物において報告されてきた身近で関心の高い現象である。生態学や進化学では、注目している形質が示すクラインを利用し、その変異の時空間的変化を調べることで形質の適応進化の因果やプロセスを明らかにしてきた。ベルクマンの法則の発見をはじめとする種間・種内で認められる形質の地理的変異に関する数々の研究成果は、クラインの重要性を象徴している。しかし、数多くのクライン研究成果の基礎をなす「クラインそのものに対する理解」はいまだ混沌としており、クライン研究は脆弱な基盤によった砂上の楼閣といえる。その背景には、クラインを形成する「測定可能な性質」が異なるクラインに対する認識および解釈の混乱などが挙げられる。本稿では、クライン研究の体系的枠組み構築のため「質的クライン」と「量的クライン」という分類方法を提案する。
  • 森本 元, 高橋 佑磨, 鶴井 香織
    生態誌 65(1) 39-46 2015年  
    クラインは、生物の形質の進化や適応のメカニズムを検討可能な興味深い現象である。この現象には古くから多くの進化学者・生態学者が魅了され、さまざまな経験的一般則が発見されてきた。量的形質である体サイズや体重のクラインを扱ったベルクマンの法則は、その代表例である。ただし、これらの法則は、優れた視点を有すると同時に、その定義に曖昧な部分も多い。クラインとは空間的なパターンのことであるが、それを生み出すメカニズムは一つではない。それゆえ、観察された現象へ与えられる名称と、その現象を説明するメカニズムは、区別して扱われるべきである。しかしながら、現状ではこの点について混乱もある。ベルクマンの法則の適用範囲が拡大していく中で、アレンの法則や温度-サイズ則といった温度勾配を背景とした法則とベルクマンの法則との関連性および相違点を改めて確認し、整合性を与える必要も生じている。そのためには、量的形質のクラインが地理的な環境要因の勾配に応じた可塑的応答と、量的遺伝を基盤とした適応進化の地理的差異によって構成されることを再確認することが第一歩となる。本稿では、量的形質のクラインにおける基礎的な考えと量的形質のクラインに関する法則の問題点を整理することで、マクロな視点から生物の一般則を導く「クライン研究」がさらなる進展をするための基盤整備を目指す。
  • 高橋 佑磨, 鶴井 香織, 森本 元
    生態誌 65(1) 47-60 2015年  
    クラインは量的形質の形質値の空間変異として現れるばかりではなく、質的形質における多型の出現比(型比)の空間変異として観察されることもある。型比のクラインの多くは環境勾配に沿って現れるため、その成立機構は比較的簡単に想像できるよう感じる。すなわち、量的形質の地理的勾配と同様、環境が徐々に変化するために各型の有利さが徐々に変化し、形質の「比率」もなだらかなに変化すると解釈されることが少なくない。しかし、量的形質の地理勾配が生じるメカニズムをそのまま質的形質のケースに適用することには大きな理論的な問題がある。なぜなら、たとえば、A型とB型の2型が出現する種を想定した場合、空間に沿ってB型が有利になる環境条件からA型が有利になる条件に変化するならば、両型の適応度が完全に等しくなる平衡点を除き、どちらか一方の型の適応度が高くなるため、この状況が進化的スケールで充分な時間継続すれば、各集団には有利な型が蔓延するためである。つまり、各集団中には多型が共存し得ないので、空間に沿って平衡点を境に型比は階段状になる。このことは、逆に言えば、各集団に多型の共存を促進する機構があれば、型比のクラインが成立する可能性があることを示している。本稿では、多型の維持機構という視点から、あらゆる型比のクラインを理解するための枠組みを提案する。この枠組は、質的形質の比率のクラインにおける多型を維持する進化的原動力の重要性を明示するとともに、空間スケールの考慮の必要性を示すものである。集団遺伝学的視点を取り入れることを通じて、質的形質のクラインの成立機構の理解を正すとともに、クラインを利用した進化学・生態学研究の足場固めをしたい。
  • 高橋 佑磨
    生態誌 64(3) 167-175 2014年  
    種内の遺伝的多型は、種分化の初期過程の例、あるいは遺伝的多様性のもっとも単純な例であることから、古くから理論的にも実証的にも研究が盛んに行なわれてきた。結果として、遺伝的多型に関する研究は、種分化や多様性の維持機構というような進化学や生態学において中核をなす重要なプロセスの理解に大きく貢献している。しかしながら、遺伝的多型の維持機構は実証的には検証が充分であるとはいいがたい。その理由の一つには、生態学者の中で多型の維持機構について正しい共通見解がないことが挙げられる。もう一つの大きな理由は、これまでに示されてきた多型の維持機構に関する証拠は状況証拠に過ぎない点である。選択の存在やその機構との因果性を担保できない断片的な状況証拠では多型の維持機構を包括的に理解することにはならないのである。そこで本稿では、まず、遺伝的多型の維持機構に関してこれまでに提唱された主な説を概説するとともに、それらの関連を体系的に捉えるための"頻度依存性"という軸を紹介する。ついで、負の頻度依存選択を例に、これまでに行なわれた多型の維持機構に関する実証研究の問題点を明確にしていく。そのうえで、選択のプロセスの複数の段階で選択の証拠を得、それらの因果性をできるかぎり裏付けていくという研究アプローチの重要性を述べたい。個体相互作用の引き金となる行動的・生理的基盤からその生態的・進化的帰結を丁寧に結びつけるこのような多角的アプローチは生態学や進化学が扱うあらゆる現象に適用可能な手法であると思われる。

書籍等出版物

 6

講演・口頭発表等

 7

共同研究・競争的資金等の研究課題

 27