鈴木 宏子
日本文学 60(1) 15-25 2011年1月 査読有り招待有り
紀貫之は最初の勅撰和歌集『古今集』を編み、自らの作歌によって王朝和歌の規範を示し、仮名日記の先駆けとなる『土佐日記』を執筆した。彼は多様なジャンルにおいて新しい<型>を創出する力を持った文学者であったと捉えることができる。特に和歌の場合、『古今集』の編纂作業の中で歌の表現についての認識を深め、かつ勅撰集にふさわしい歌を模索することによって、貫之は新しい和歌の<型>を創出していったのではないか。そのような歌集編纂と作歌が不可分に結びついた創作活動について、『古今集』二番歌と八九番歌を具体例として論じた。