<p> 発表者らは、森林周辺環境の都市化に伴い、森林表層土壌の酸が中和されることを明らかにした。都市化に伴う森林土壌の酸の中和が生態系内の物質循環に及ぼす影響を解明する一環として、都市化の進行程度の異なる地域間で、森林土壌での有機物の分解・無機化特性を比較した。非都市化地域の森林として埼玉県秩父市内の東京大学秩父演習林を、都市化地域の森林として千葉県松戸市内と市川市内の公園の樹林地を選定した。各森林内で表層土壌を採取し、室内培養により二酸化炭素放出速度の変化を経時的に測定し、反応速度論的解析により無機化されうる炭素量を求め、土壌中の全炭素量に占める無機化されうる炭素量の割合(C0(%))を算出した。また、それぞれの森林の表層土壌中に市販のティーバッグを埋設し、ティーバッグ内容物の変化量に基づき有機物分解特性を示すTea Bag Index(初期分解速度:k, 長期蓄積能:S)を算出した。非都市化地域のC0(%)は都市化地域よりも高かったが、酸を中和したところ減少した。また、都市化地域のSは非都市化地域よりも低くなった。すなわち、土壌に供給された有機物の分解後の残存率は都市化により低くなった。</p>
本研究の目的は、有機物(木質チップ材)に増殖する糸状菌による土壌中のセシウム(Cs)吸収特性を明らかにすることである。試験地は福島県川俣町にあるCsで汚染された斜面上の落葉広葉樹林である。2013年7月に、斜面上部、中部、下部にそれぞれおよそ40 m2の調査区を設け、林床のL層を除去して、スギを粉砕したチップ材を3 kg m-2(斜面上部)~5 kg m-2(斜面中部、下部)敷きならした。チップ材敷きならし後、1~6ヶ月の間隔でチップ材を採取し、篩い分けて、粒径毎にチップ材の量とCs濃度を測定し、Cs吸収量を算出した。Cs濃度は粒径の小さいチップ材で高く、粒径の大きなチップ材でも経時的に増加した。Cs濃度の増加はチップ材全体では敷きならし後5ヶ月間で特に大きかった。チップ材によるCs吸収量は、敷きならし後5ヶ月間までに増加し、その後あまり増えなかった。敷きならし後1年間にチップ材に吸収されたCs量は斜面上部、中部、下部でそれぞれ19、21、15 kBq m-2であり、チップ材敷きならし時にF層や鉱質土壌に含まれていたCs量の4~5 %に相当した。チップ材敷きならし量はCs吸収量にあまり影響しなかった。