小西 孝宜, 滝口 伸浩, 早田 浩明, 永田 松夫, 鍋谷 圭宏, 池田 篤, 貝沼 修, 趙 明浩, 山本 宏, 宮崎 勝
日本消化器外科学会雑誌 46(5) 317-324 2013年5月
目的:胃癌の胃切除後切除断端陽性例に対する追加切除の適応に一定の見解は得られていない.今回,切除断端陽性胃癌の治療の現況を検討し,適切な治療方針を考察した.方法:2000年1月から2010年9月までの胃癌術後切除断端陽性59例を臨床病理組織学的に分析した.結果:切除断端陽性例は全体の3.3%で,Stage IVで最も頻度が高かった.Stage Iは5例中3例が追加切除となり,2例に再切除標本内の癌遺残を認めた.Stage II・IIIの17例には,巨大腫瘍・リンパ節転移陽性・SE以深・未分化型腺癌の症例が有意に多く,2例に追加切除が,15例に化学療法が施行された.術後2年以内の遠隔再発はStage II 25%,Stage IIIA 57%,Stage IIIB 67%だった.Stage IVの37例は全例追加切除の対象とならなかった.結語:Stage Iは追加切除の適応であり,Stage IVは追加切除の適応とならなかった.Stage II・IIIは遠隔再発リスクの高い症例が多く,追加切除の適応は限定され化学療法が選択されることが多かった.これらの症例には病理組織学的検査結果をふまえて追加切除の適応を判断することが必要と考えられた.(著者抄録)