久保 光徳, 矢久保 空遥, 田内 隆利, 寺内 文雄, 青木 弘行
デザイン学研究 58(3) 75-78 2011年
人の手によって自然発生的に生み出され,そして日常において使用されて来ている民具の一つの背負子の形状に注目し,そこに隠されていると思われる力学的な意味を明らかにするために,初等的な材料力学および構造力学の手法を用いて力学的な形状評価を試みた。背負子が背負われた時の力学的状況をシミュレートするための典型的な背負子の有限要素モデルを定義した。この有限要素モデルに実際の使用を想定した荷重条件を与え算出した背負子上の応力分布から,応力の主軸,せん断力,曲げモーメントの分布が求められた。そしてその結果に従って,さらに単純化された背負子の材料力学モデルを定義し,より単純化された形においてその形状の力学的意味を検討した。その結果,この材料力学モデルによる背負子形状の検討を通して,この背負子形状が,形状全体において,最適形状の一つである等応力形状に準ずる形であることを明らかにした。