戸田 善治, 小関 悠一郎, 鏑木 康平, 大川 遼馬, 土屋 雅, 遠藤 学, 遠藤 友博, 井原 三勇士, 河村 将, 小倉 智浩, 石橋 賢
千葉大学教育学部研究紀要 71 217-231 2023年3月1日
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[要約] 本研究は,2022年大学院授業「授業研究(社会)」の実践報告であるとともに,大学教員,大学院生そして現職教員による,妖怪に関する民俗学等の研究成果を取り入れた小単元「妖怪は社会を『うつす』鏡」の開発研究である。江戸時代以前においては,雷や豪雨,台風といった自然現象など,当時の人々にとって不可解な出来事を理解,説明する為の存在として妖怪が信じられていた。江戸時代以降,妖怪は娯楽の対象としても捉えられ,すごろくやカルタなどの玩具に妖怪の絵が描かれ,また歌舞伎の演目や文学小説にも妖怪を題材にしたものが作られた。現代においては,アニメ「妖怪ウォッチ」に代表されるように,商業主義の考えから,妖怪がキャラクター化されている。このような妖怪の捉え方の変化の背景には,食料の収集が困難などの社会不安の中で,鬼などの妖怪が生まれたのだと理解されてきたものが,戦乱も少なくなり,食料の収集も比較的容易となり,学問も発達した。その社会の変容が,人々に心理的な余裕を与え,妖怪が娯楽としての意味合いも持つようになった。このような,人々の妖怪の捉え方の変化とその社会的背景を関連させた小学校歴史単元の開発を行った。