橋本 紗良, 青木 宏展, 三浦 秀彦, 植田 憲
日本デザイン学会研究発表大会概要集 71 502 2024年
情報へのアクセスが容易となった現代の移動体験においては、多くの場合目的地が伴う。一方で「目的地のない歩き」には、街中の事象との偶発的な遭遇やそれによる新しい視点の誘発などの有意義な可能性が見出せるのではないかと考え、本研究では「迷う」をテーマに据えた街歩き体験の展開を行った。 目的地の概念が希薄となった移動体験の設計にあたり、こうした体験を「迷う」ことの擬似体験と称し、事前知識に起因する予定調和的行動様式から脱却し、偶発的な出会いを誘発すると仮定した。こうした体験を通じて、①これまで見落としてきた街に対する視点、②街の事物に投影された自身の興味や心的状況の認識を促す手法を導出することを本研究の目的とした。また、上記過程で記録された「街の魅力」や「街歩きの体験的価値」を可視化し、地域の人びとの街に対する愛着形成や自己発見の機会創出の可能性を探った。