浜部直哉, 馬場明子, 前田未野里, 勝岡弘幸, 種石始弘, 久松 奨, 野田勝二
園芸学研究 19(3) 229-235 2020年7月15日 査読有り最終著者
‘ヒュウガナツ’ の枝変わり品種である ‘古山ニューサマー’ について,無核果が ‘ヒュウガナツ’ に比べて多く生産される要因を検討した.‘古山ニューサマー’ および ‘ヒュウガナツ’ の自家受粉における柱頭内の花粉管伸長を調べたところ,両カンキツ種ともに花粉管の伸長は花柱上部で停止し,花柱中部および下部では認められなかったことから,‘古山ニューサマー’ は,‘ヒュウガナツ’ と同様に自家不和合性を有していることが明らかになった.また,除雄後に小袋を掛けることで花粉を遮断した条件下における ‘古山ニューサマー’ の着果率を ‘ヒュウガナツ’,‘ヒュウガナツ’ の枝変わり品種である ‘西内小夏’ および ‘室戸小夏’ と比較したところ,生理落果後における ‘古山ニューサマー’ の着果率は60.8%であり,‘西内小夏’ の2.5%,‘室戸小夏’ の12.5%および ‘ヒュウガナツ’ の8.3%に比べて高かった.このことから,‘古山ニューサマー’ は ‘ヒュウガナツ’ に比べて強い単為結果性を有していることが明らかになった.また,‘古山ニューサマー’ の単為結果は,花粉を遮断した条件下で,かつジベレリンなどの化学薬剤を用いずに誘起されたことから,自動的単為結果であると考えられた.これらのことから,‘古山ニューサマー’ は自家不和合性を有し,かつ自動的単為結果性を有することが明らかになり,‘ヒュウガナツ’ に比べて強い単為結果性を有していることが,無核果を多く生産できる要因であると考えられた.