荒木 暁子, 市原 真穂, 今野 美紀, 佐藤 奈保, 仲西 江里奈, 中村 伸枝
千葉大学看護学部紀要 (30) 37-42 2008年3月
本研究では,乳幼児期の障害児を育てる家族,および,在宅生活を支える重要な役割を担う専門職の感じている患児家族の意思決定に関わる困難を明らかにすることを目的に,家族と専門職それぞれに共通する内容を用いた質問紙調査を行った.それにより,意思決定の内容と意思決定上の困難,および,それらの障害による違い,得られた/提供したサービス,サポートへの期待/より必要と感じるサポート,決定への満足度とその理由などが明らかとなった.家族の報告した意思決定の内容は障害別に内容が異なり,肢体不自由では手術・治療に関すること,知的・発達障害は,通園や施設利用,通園通学の決定が多く報告された.専門職は,気管切開術の決定,ターミナルにおける治療の継続や家族の障害受容など,障害に特異的な局面でのジレンマを報告しており,意思決定の局面の捉え方が家族と専門職で異なった.意思決定時に家族は,複数の専門職の意見やピアによる情報提供,精神的支えを得ており,さらに正確・適切な情報,ピアによる情報提供など情報に関する充実を求めると同時に,専門家の正直な意見,決定プロセスへ寄り添って欲しいなど専門家のより積極的な関与も期待していた.一方,専門職はそれ以外にも,情報以外に家族内の調整やコミュニケーションを促すかかわりを行い,さらに必要であると感じていた.家族は決定に関して7割は満足していたが,その理由は子どもにとってよかったが最も多く,他,家族や自分にとってよかったというものであった.家族が必要な支援を十分受けて意思決定するため,それぞれの臨床現場で適切な体制・システムを構築していくことが必要である.