佐藤 栄作
千葉大学経済研究 = Economic journal of Chiba University 29(3) 45-63 2014年12月
食品や日用雑貨に関する消費者の購買行動の多くは,低関与型の購買行動である。それらの商品の買物は頻繁に行われ,概ね同じような行動が繰り返されるので,習慣的な購買行動となりやすい。日常的に買う食品や日用雑貨の価格が,驚くほどの高額になるということも滅多にあるものではない。加えて,メーカーの製造技術の進歩により,商品間の品質に関する知覚差異も多くの場合はそれほど大きいとは言えない状況になっている。それゆえ食品や日用雑貨の買物であれば,消費者が対象となりそうな商品の情報を事細かに調べ,何を買うべきかについて詳細な検討を事前に行ってから買物に出かけるというようなことまでしているとは予想しにくい。家庭内在庫が切れてすぐに買う必要に迫られている 物以外については,むしろ買物に出かけた先の店舗の品揃えや特売の状況などを見てから購買を決定するというようなことの方が,よほどよくある購買行動である(青木 1989a)。店舗内で購買決定をする場合が多いということは,消費者の購買意思 決定に対する店舗内要因の影響が相対的に高まることを意味する。それ ゆえ小売店舗における品揃えや売場作り,セールス・プロモーションに,小売業はもとよりメーカーや卸売業も積極的に関わり,協働による売場開発への取り組みが数多く行われてきているのである。そして店頭におけるマーケティング活動の起点となるものが,顧客の購買行動に関する 理解である。小売店舗内の購買行動を構成する要素の中では,特定商品カテゴリの購買生起,当該商品カテゴリにおけるブランド選択や購入量に関する購 買意思決定のメカニズムが,特に研…小柏喜久夫先生退職記念号欧文抄録: p.148