佐藤尚子, 松下達彦, 笹尾洋介, 田島ますみ, 橋本美香
千葉大学国際教養学研究 4(4) 55-65 2020年3月 査読有り
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[要旨] 大学の講義や教科書には、専門用語のほかに、分野に関わらず学術的な文脈で用いられる学術共通語彙が高頻度で現れる。これらの学術共通語彙の理解は、日本の大学で学ぶ留学生には必須である。本稿では、日本語学術共通語彙テストを使用して、韓国で6か月の日本語予備教育を受けた韓国人学習者(日韓共同理工系学部留学生)(以下、日韓生)がどの程度学術共通語彙の知識を獲得し、理解しているかを、国立大学で学ぶ日本人学部生と比較し、報告する。調査の結果、日本人学部生は20,000語レベルまでの学術共通語彙はほぼ問題なく理解している。一方、日韓生は、韓国での予備教育終了時に、上位層は日本人学部生とほぼ同等に理解しているのに対して、下位層は日本人学部生の最低点との差が大きかった。学部入学後に日本人学部生と同様に授業を理解していくためには、日本での6か月の予備教育期間中に学術共通語彙を知り、理解できるように教育を行う必要がある。