佐々木 康人, 玉井 洋介, 林 洋一, 窪田 正二郎, 藤尾 高志, 小笠原 武雄, 江頭 祐嘉合, 真田 宏夫, 綾野 雄幸
日本栄養・食糧学会誌 44(6) 461-470 1991年
小麦フスマ (WB) を, 水とエタノールで数回, 撹拌洗浄して得た精製小麦フスマ (PWB), WBからアルカリ抽出して得た水不溶性ヘミセルロース画分 (HC-A), 水溶性ヘミセルロース画分 (HC-B) の各標品を, 高コレステロール飼料 (コレステロール1%, コール酸ナトリウム0.25%を含む) に添加してラットに投与し, 血清ならびに肝臓コレステロールレベルに及ぼす影響について調べた。添加量は, WBおよびPWBを食物繊維として5%, HC-AおよびHC-Bを2%とした。さらに, PWBが血清コレステロール上昇抑制能を有することから, その作用機序解明の一助として, ラットの消化管通過速度に及ぼす影響と, その消化管中での形態変化について, 走査型電子顕微鏡観察と, 構成糖分析により, WBと比較検討を行った。<BR>1) WBに比較して, PWB, HC-A, HC-Bは血清コレステロール上昇抑制能を示した。HC-AとHC-Bの比較では, HC-Bがより強い血清コレステロール上昇抑制能を示した。<BR>2) WBとPWBの, 消化管通過時間には顕著な差がみられなかった。<BR>3) PWBは, WBに比較して細胞壁からのHC-Bのような非セルロース多糖類 (ヘミセルロース) の溶出が著しかった。<BR>これらの結果から, 血清コレステロール上昇抑制能は水溶性のヘミセルロース画分が強く, PWBの血清コレステロール上昇抑制能発現機序も, 消化管通過時間の短縮化によるものではなく, HC-Bのような非セルロース多糖類 (ヘミセルロース) の作用によることが推定された。