西垣知佳子, 横田 梓, 小山 義徳, 神谷 昇, 中條清美
千葉大学教育学部研究紀要 63 287-294 2015年3月
「データ駆動型学習」(Data-Driven Learning:DDL)は言語データベースと検索用アプリケーションソフトを使って行われる外国語学習法である。学習者の気づきを引き出すDDLは,帰納的に考えさせる特長が認められ,近年注目をされている。本研究では,中学3年生に対して,教材を紙に印刷して行うペーパー版DDLと,タブレットPCを使うタブレット版DDLを行った。タブレット版DDLの検索用ソフトには無料で使えるAntPConcを使い,言語データには学習者の英語力に適した英文を精選して使った。指導実践には処置群(DDL群)20名と対照群(従来型群)21名が参加した。授業では,「インプット⇒インテイク⇒統合化⇒アウトプット」という言語習得のプロセスの中の「インプットからインテイクへの橋渡し」に,DDL群ではDDLを活用し,従来型群では教師が教える演繹的方法を用いて文法指導をした。指導は全12回で,DDL群,従来型群ともに授業時間のおよそ20分を使って文法指導とその後に続く口頭練習を行った。指導の効果は,文構造気づきテストと質問紙調査を使って検証した。気づきテストの結果から,文構造の違いを発見する問題で,DDL群が従来型群に比べてより多くのことに気づいたことから,DDLをとおして学習者に言葉を観察する眼が育っていたことが確認された。また質問紙調査の結果からはタブレット版DDLが好意的に受け入れられていたことが確認された。本研究は,科学研究費補助金基盤C(25370618)および科学研究費補助金奨励研究(26908052)の支援を受けて行われました。