岡本 玲子, 岸 恵美子, 松本 珠実, 臺 有桂, 村嶋 幸代, 麻原 きよみ, 佐伯 和子, 荒木田 美香子, 井口 理, 和泉 比佐子, 岩本 里織, 遠藤 雅幸, 唐川 祐一, 坂田 祥, 古橋 完美, 前田 香, 松原 三智子, 三森 寧子, 茂木 りほ, 吉村 史子
日本公衆衛生雑誌 71(12) 745-755 2024年12月
目的 本研究の目的は,変遷する社会の健康課題の解決・改善に資する日本の保健師のコアバリューとコアコンピテンシーを,実践者・教育研究者を含む保健師関連団体の合意形成に基づいて明確にすることであった。方法 原案は,保健師の実践・教育・研究各領域に携わる団体の役員と被推薦者20人による項目収集と分類,精錬を繰り返す5回の協議により作成された。専門家パネルは,保健師関連6団体より534人の推薦を得て,3ラウンドのデルファイ調査が行われた。合意基準は,70%以上を合意,80%以上を強固な合意とした。結果 第1ラウンドでは272人(50.9%)の回答を得,全ラウンド回答した者は217人であった。原案は,各ラウンドで得た意見をもとに修正され,第3ラウンドでは,すべてのコアバリューとコアコンピテンシーの項目と定義について,90%以上の合意を得た。結論 デルファイ調査により,非常に強固な合意水準のもと,コアバリューの3項目,【健康の社会的公正】,【人権と自律】,【健康と安全】,コアコンピテンシーの8項目,【プロフェッショナルとしての自律と責任】,【科学的探究と情報・科学技術の活用】,【ポピュレーションベースのアセスメントと分析】,【健康増進・予防活動の実践】,【公衆衛生を向上するシステムの構築】,【健康なコミュニティづくりのマネジメント】,【人々/コミュニティを中心とする協働・連携】,【合意と解決を導くコミュニケーション】,およびそれらの定義が明確化された。今後は,これらを各領域の保健師や保健師関連団体の合意基準を満たした見解として,全国的な保健師の実践・教育・研究に係るスタンダードを作成する際の基盤として活用することを推進する必要がある。(著者抄録)