永井 智子, 米倉 佑貴, 梅田 麻希, 麻原 きよみ, 川崎 千恵, 小林 真朝, 嶋津 多恵子, 遠藤 直子, 大森 純子, 三森 寧子, 江川 優子, 永田 智子, 佐伯 和子, 佐川 きよみ, 小西 美香子
日本公衆衛生雑誌 70(11) 759-774 2023年11月
目的 市区町村の自治体保健師における地区活動の実施状況および地区活動に伴う保健師の認識を評価する尺度を探索的に開発することを目的とした。方法 文献検討,自治体保健師へのインタビュー調査に基づき,尺度案を作成し,全国の自治体保健師を対象に質問紙調査を実施した。自治体の多様性を確保するために人口規模別にリクルートを行い,52自治体2,074人に質問紙を配布した。探索的因子分析により因子数を検討し,候補の因子構造に対して,確認的因子分析を行い,因子構造を確定させた。尺度の信頼性は,クロンバックα係数を算出し,妥当性は,既存の尺度である保健師の道徳的能力尺度,行政保健師の職業的アイデンティティ尺度,保健師経験年数との相関により検証した。結果 721人(有効回答率34.8%)の回答が得られ,分析対象とした。保健師の地区活動の実践の指標となる【地区活動を構成する活動内容(3因子9項目)】【地区活動による地域/住民に対する保健師の認識(3因子10項目)】【地区活動を支える組織環境(2因子11項目)】の3種類の尺度を開発した。クロンバックα係数は,順に0.896,0.913,0.868であった。それぞれの下位因子と既存尺度との相関については,仮説通り正の相関がみられた。経験年数との相関では,一部仮説が支持されなかった。結論 本研究で開発した3つの尺度について,それぞれ信頼性と妥当性を検討した。これらの尺度は,保健師が目的に応じて選択し,単独あるいは組み合わせて使用することが可能である。今まであいまいであった地区活動を評価するための指標が具体的に示されたことが大きな特徴である。尺度項目を参考に日々の保健活動を行うことで,組織レベル,個人レベルでの地区活動の評価の指標として活用することができると考える。(著者抄録)