河野澄夫, 小野寺武夫, 早川昭, 岩元睦夫, 太田英明, 菅原渉
園芸学会誌 53(2) 194-201 1984年 査読有り
生食用クリの長期貯蔵技術の確立を目途に, 貯蔵前処理としての予冷を強制通風予冷, 差圧予冷, 真空予冷の3予冷方式について検討するとともに, ポリエチレン小袋包装による低温貯蔵試験を行い, クリの適正貯蔵条件について検討した. 結果の概要は次のとおりであった.<br>1. 強制通風予冷, 差圧予冷, 真空予冷の3種類の予冷の中で, 真空予冷による冷却が最も速く, 次いで差圧予冷, 強制通風予冷の順であったが, 真空予冷の場合,冷却後クリの表皮に白い模様が発生するため, 官能検査では悪い評価を得た. 総合して三つの予冷方式の中で差圧予冷が最も有望な方式と考えられた.<br>2. 予冷中の目減りは, 差圧予冷で1.6%, 真空予冷で2.8%であった. 真空予冷の場合, 蒸発の潜熱がすべてクリの冷却に使用されたと仮定して計算した結果とほぼ同じ値を示した.<br>3. 貯蔵中のカビの発生度は, 貯蔵温度が高いほど,貯蔵期間が長いほど大きくなり, 10°Cで4か月以上あるいは5°Cで6か月以上貯蔵するとほぼ全部のクリが腐敗した.<br>4. クリ果肉の弾性係数は果肉の方向によって異なり, 1°C貯蔵の場合, 果実中心を通り座に平行な断面の長径方向において貯蔵中変化が認められた.<br>5. ショ糖含量は, 1, 5, 10°Cとも貯蔵前期に急激に増加し, 特にその傾向は低温において著しかった. でんぷん含量はそれと全く反対の傾向を示した.<br>6. 貯蔵適性について, LL果とL果を比較すると,目減りが少ないこと, 呼吸速度が小さいことからLL果の方が貯蔵に適していると判断された.<br>7. クリの各温度における品質保持期間は, 10°Cで1か月, 5°Cで2か月, 1°Cで3か月であった.