大津 昌也, 田中 緑, 堀内 隆彦
日本色彩学会論文誌 2(2) 40-54 2024年10月31日
近年,ipRGCが視知覚に与える影響に関する研究が進められている.著者らの先行研究では,分光プロジェクタを用いた視覚実験を通じて,ipRGCが中心視の色弁別に与える影響を解析し,ipRGCに与える刺激量の差が大きいほど,ipRGCが中心視の色弁別に影響を与えることを示した.一方,従来研究より,ipRGCは中心窩から少し離れたところに存在し,また黄斑色素などの影響を排除するためにも,周辺視環境下における検証が求められていた.本研究では,先行研究で実施したメタマー刺激対を用いた色弁別評価実験を周辺視環境で行うことによって,ipRGCが周辺視の色弁別に与える影響を考察することを目的とする.実験は,「ペンタミックメタマー刺激対」を用いた実験により,あらかじめ標準観測者の感度とのずれが少ない被験者を選出した上で,「メタメリックipRGC刺激対」を用いた色弁別評価実験を行った.実験の結果,錐体と桿体の刺激量を一定にした条件下でipRGC刺激量のみを増加させた時,弁別率が上昇する被験者が複数確認された.ただし,見えの違いが明るさに起因するいう観察者と,色に起因するという観察者がおり,弁別の手掛かりを特定することは困難であった.